カスハラで顧客を訴えるには?民事・刑事の手段と進める3つの手順

「カスハラに毅然と対応したい」と思っても、「本当に顧客を訴えられるのか」「費用に見合うのか」が分からず動けない担当者は少なくありません。本記事を読めば、訴える可否・判断の仕方・民事/刑事の手段・進める手順・裁判例の見方、そして従業員を守る自社の備えまでが一通り分かります。

この記事でわかること

  • カスハラで顧客を訴えることはできるのか、その可否と判断基準
  • 訴えるべきか判断するチェックポイント(目的・悪質性・コスト)
  • 民事・刑事の手段と、訴訟前にとれる選択肢
  • 訴える前の準備と進める3つの手順、証拠の残し方
  • 裁判例から読み取る「認められる条件」と回収の現実
  • 従業員から逆に訴えられないための社内体制と義務化への備え

カスハラで顧客を訴えるとは、暴言・脅迫・執拗な業務妨害など社会通念上の範囲を超えた悪質な言動に対し、損害賠償・差止め・刑事告訴といった法的手段で責任を追及することをいいます。2026年10月1日からは、従業員を雇用するすべての事業主に、カスハラ防止のための雇用管理上必要な措置が義務化されます。義務化で企業が整えるべき全体像は、カスハラ対策義務化で企業がやるべき5つの措置で詳しく解説しています。

カスハラ対策実務ガイド編集部の結論
編集部では、顧客を訴えるかどうかは「訴えられるか」より「訴えるべきか」で考えるべきだと整理しています。ポイントは4つ。①悪質なカスハラは民事・刑事の両面で責任を追及できる、②ただしカスハラ該当と損害賠償の可否は別問題、③訴える前に目的・証拠・費用対効果・回収可能性を確認する、④企業側も相談窓口や対応ルールで従業員を守る。従業員が暴言や暴力に耐える必要はなく、毅然と対応する備えを整えることが経営者の役割です。

なお本記事の編集部独自整理(目的別の手段早見表・記録フォーマット・判断の考え方)は、厚生労働省・政府広報・裁判所の公的情報や公開裁判例をもとに、企業の実務担当者が使いやすい形へ再構成したものです。個別事案の法的判断については、弁護士にご相談ください。

この記事の編集者

カスハラ対策実務ガイド編集部

カスハラ対策実務ガイド編集部

カスハラ対策実務ガイドは、企業・店舗・現場担当者に向けて、カスタマーハラスメント対策に役立つ実務情報を発信するWebメディアです。編集部では、カスハラの基礎知識、社内体制づくり、従業員を守る対応手順、マニュアル整備のポイントなどを、現場で活用しやすい形でわかりやすくお届けしています。

カスハラで顧客を訴えることはできる?可否と判断基準を押さえる

悪質なカスハラは法的に責任を追及できる可能性があります。まずは「訴えられるのか」という可否と、その前提となる考え方を整理します。

悪質なカスハラは民事・刑事の両面で訴えられる可能性がある

結論として、要求内容や態様が社会通念上の範囲を超える悪質なカスハラは、民事・刑事の両面で責任を追及できる可能性があります。民事では生じた損害の賠償や行為の差止めを、刑事では加害者の処罰を求めることが考えられます。「お客様だから何を言っても許される」という前提は法的には通用せず、顧客であっても一定のラインを越えれば責任を負います。もっとも、どの手段が実際に使えるかは個別の事情によって変わるため、可否の判断には次の二つの視点が欠かせません。

カスハラに該当することと損害賠償が認められることは別である

とくに注意したいのは、ある言動が「カスハラの定義」に当てはまることと、裁判で損害賠償が「認められること」は別の問題だという点です。カスハラは、①顧客等による言動であり、②社会通念上相当な範囲を超え、③労働者の就業環境を害するもの、と整理されます(参考:政府広報オンライン「カスハラとは?義務化されるカスハラ対策」)。定義や基本的な対策の全体像はカスハラ対策とは何かを解説した記事でも詳しく整理しています。一方で損害賠償を勝ち取るには、これとは別に「行為の違法性」「実際に生じた損害」「行為と損害の因果関係」を立証しなければなりません。「ひどいカスハラだった」という感覚だけでは賠償は認められにくく、客観的な裏付けがあるかどうかが結果を分けます。実際に、違法性や因果関係の立証が壁となって請求が退けられた裁判例もあります(後述)。

企業が訴えるか従業員が訴えるかで請求内容は変わる

訴える主体が「企業(法人)」か「被害を受けた従業員個人」かによって、請求できる内容は変わります。下表に主な違いを整理しました。

訴える主体主に請求できる内容
企業(法人)業務妨害による損害、対応に要した人件費相当額、行為の差止め など
従業員個人暴言・暴行などで受けた精神的苦痛に対する慰謝料 など

実際の裁判でも、従業員個人が顧客に直接慰謝料を請求して認められた例があります(詳細は「裁判例から学ぶ判断材料」の項で後述)。誰がどの損害を被ったかを切り分けることが、検討の出発点になります。

カスハラで顧客を訴えるべきか判断するチェックポイント

訴えられることと、訴えるべきことは違います。動き出す前に、目的・行為の悪質性・コストという3つの視点を確認しましょう。

やめさせたいか賠償させたいか処罰してほしいかで目的を分ける

最初に決めたいのは「何を実現したいか」です。目的によって取るべき手段は大きく変わります。下の早見表で、目的と手段の対応を整理しました。

目的主な手段向いているケース
行為を止めたい警告書・差止め・仮処分・出入り禁止架電・来店・面談要求が続く
損害を回復したい損害賠償請求売上損失・対応人件費・治療費がある
処罰を求めたい被害届・刑事告訴暴行・脅迫・業務妨害・名誉毀損が疑われる
従業員を守りたい対応ルール・相談窓口・担当交代・接触遮断被害従業員の心身に影響が出ている

目的が複数にまたがることもありますが、まず軸を定めておくと、弁護士への相談もスムーズに進みます。

暴力・脅迫・執拗な業務妨害は法的措置を検討しやすい

法的措置を具体的に検討しやすいのは、行為の悪質性が客観的に見て高い類型です。代表的なものは次のとおりです。

  • 暴力行為>:殴る・物を投げる・胸ぐらをつかむなど身体に危険が及ぶもの
  • 脅迫的言動>:家族や身体に危害を加えると示唆するもの
  • 執拗な業務妨害>:長時間の居座りや多数回の架電で業務に著しい支障が出るもの
  • 個人攻撃>:特定従業員へのつきまといやSNS上の誹謗中傷

これらは正当なクレームとの線引きが比較的つきやすく、刑事・民事いずれの対応にもつなげやすい類型です。なお、正当なクレームとカスハラの境目についてはカスハラとクレームの違いを解説した記事もあわせてご参照ください。

費用・時間・回収可能性・炎上リスクも事前に確認する

訴えると決める前に、現実的なコストとリスクも見ておく必要があります。確認したい観点は次のとおりです。

  • 費用>:弁護士費用や訴訟費用が、回復したい損害額に見合うか
  • 時間>:解決まで数か月から年単位を要する場合がある
  • 回収可能性>:勝訴しても相手に支払能力がなければ回収できないことがある
  • 炎上リスク>:対応の公表が評判(レピュテーション)に影響する可能性がある

これらを天秤にかけ、「訴える」以外の選択肢(後述する訴訟前の対応)も含めて比較することが大切です。感情だけで進めると、得られる結果に対して負担が大きくなりがちな点に注意しましょう。

民事・刑事の手段と訴訟前にとれる選択肢

訴える手段は一つではありません。民事・刑事・訴訟前の対応という3つの引き出しを押さえると、状況に応じた選択ができます。

損害賠償請求・差止め・仮処分など民事上の手段

民事上の手段は、目的に応じて段階的に選べます。主なものは次のとおりです。

  • 損害賠償請求訴訟>:カスハラで生じた損害の金銭賠償を求める
  • 差止め・仮処分>:架電や面談強要などの行為そのものの禁止を求める
  • 債務不存在確認訴訟>:過大な要求に応じる義務がないことを確認してもらう

緊急に行為を止めたい場合は仮処分、損害を回収したい場合は損害賠償、というように使い分けます。実際に、電話対応や面談の強要を禁止する差止めを命じた裁判例も存在します(後述)。

被害届・刑事告訴で問える主な犯罪と進め方

カスハラの内容が犯罪に当たる場合は、警察への被害届や刑事告訴によって加害者の処罰を求めることができます。該当しうる主な犯罪は次のとおりです。

  • 暴行罪・傷害罪>:殴る・突き飛ばすなど身体への加害
  • 脅迫罪・強要罪>:危害をほのめかす、土下座を強要するなど
  • 名誉毀損罪>:事実を示して社会的評価を低下させる
  • 不退去罪・業務妨害罪>:退去要求に応じない、執拗な妨害で業務を害する

被害届は被害の申告、刑事告訴は処罰を求める意思表示であり、告訴には告訴状の作成が必要です。証拠の整え方が結果を大きく左右するため、進め方は弁護士と相談しながら決めるのが安全です。

警告書・出入り禁止・利用停止など訴訟前に取れる対応

訴訟はあくまで最終手段であり、その前に取れる対応も有力です。代表的なものは次のとおりです。

  • 警告書(内容証明)>:弁護士名義で行為の中止を求める
  • 出入り禁止・利用停止>:施設管理権に基づき適法な範囲で来店等を断る
  • 示談交渉>:金銭や今後のルールについて合意で解決を図る

弁護士からの内容証明が届いた段階で相手の態度が一変し、訴訟まで至らずに解決するケースも少なくありません。ただし、出入り禁止や利用停止は有効な選択肢になり得る一方で、業種の公共性、契約関係、これまでの対応経緯、障害者差別解消法上の合理的配慮などを踏まえ、恣意的な運用にならないよう注意が必要です。線引きに迷う場合は、弁護士に相談しながら段階的に検討するのが現実的です。

訴訟に進む前に出入り禁止を検討する場合は、カスハラ客を出禁にする法的根拠と具体的な手順で、判断基準・通知方法・再来店時の対応まで確認できます。

訴える前の準備と進める3つの手順

実際に動くときは、準備の順番が結果を左右します。ここでは押さえておきたい3つの手順を、実務目線で解説します。

1. 早い段階で弁護士に相談し方針を固める

最初の手順は、できるだけ早い段階で弁護士に相談することです。早期相談には、裁判で不利になりかねない対応を避けられること、そして確保すべき証拠を正しく把握できること、という二つの大きな意味があります。損害が出ているなら損害賠償、行為を止めたいなら仮処分、悪質性が高いなら刑事告訴、というように、目的に応じた方針を専門家と一緒に固めていきます。自己流で対応を進めてしまうと、後から事実の証明が難しくなることがあるため、迷ったら早めに相談するのが得策です。

2. 録音・映像・履歴・診断書など客観的な証拠を確保する

次の手順は、客観的な証拠の確保です。映像・録音、やり取りの履歴、診断書、対応スタッフの報告書などが有効で、カメラ映像や録音は時間が経つと消えるものもあるため早期確保が重要です。記録は、後から見返せるよう次の項目で残しておくと、事実関係の立証に役立ちます。

記録項目記載内容
発生日・時間いつ起きたか(開始・終了)
場所・チャネル店舗・電話・メール・SNSなど
顧客の言動できるだけ原文のまま記録する
会社側の対応誰が、どう対応したか
業務への影響対応時間・売上影響・他顧客対応への支障
従業員への影響体調不良・診断書・相談記録など
保存した証拠録音・映像・メール・スクリーンショットなど

決定的な証拠がない場合でも、こうした報告書や社内の注意喚起メールの記録など、事実を裏付ける材料を積み上げることが有効です。記録様式や対応フローを社内に落とし込む方法は、カスハラ対応マニュアルの作り方で詳しく解説しています。

3. 訴訟提起または告訴状の提出を進める

方針と証拠が整ったら、最後の手順として訴訟の提起や告訴状の提出を進めます。訴状や告訴状の内容を弁護士と打ち合わせ、提出する証拠を整理していきます。民事なら損害の立証、刑事なら告訴状の作成と適切な証拠提出が要となり、いずれも専門的な準備が必要です。ここまでの手順を順序立てて踏むことで、自社の希望に沿った結果へ近づけやすくなります。

裁判例から学ぶ判断材料

裁判例は「訴えれば勝てる」ではなく「どんな条件なら認められやすいか」を教えてくれます。民事・刑事・不認容、そして金額の現実という角度から見ていきます。

民事で差止め・損害賠償が認められた裁判例

請求が認められた代表例が、大阪地裁 平成28年6月15日判決です。多数回の濫用的な情報公開請求や面談強要を繰り返した人物に対し、大阪市が差止めと損害賠償を求めた事案で、裁判所は、電話対応や面談の強要、大声・罵声を禁止する差止めを認め、あわせて80万円の損害賠償(弁護士費用相当額を含む)を命じました。事後的な賠償だけでは回復困難な重大な損害が生じるおそれがある、と評価された点が、行為そのものの禁止にまで踏み込んだ理由です。「業務を平穏に遂行する権利」の侵害として差止めが認められた事案として参考になります(裁判例は裁判所「裁判例検索」で確認できます)。

刑事事件として有罪になった裁判例

刑事で責任が問われた例が、松江地裁 平成30年8月10日判決です。保険会社に約6か月で1019回架電し続けた行為について、偽計業務妨害罪で懲役2年・執行猶予3年の有罪判決が下されました。会社や警察から再三中止を求められても架電を続けた点に悪質性が認められています。執拗な架電や長時間の妨害は、民事だけでなく刑事の対象にもなり得ることを示す事案です。

カスハラ的な言動があっても損害賠償が認められなかった裁判例

一方で、問題のある言動があっても請求が認められないこともあります。入院患者の家族が、夜勤の看護師らを約40分にわたり「頭が悪いのか」などと叱責した言動について、看護師の退職や病床の一部閉鎖を理由に病院が損害賠償を求めた事案では、長崎地裁・福岡高裁がいずれも請求を棄却し、最高裁も上告を退けて病院側の敗訴が確定しました。裁判所は、暴行を除く言動について違法性を認めず、また仮に問題があったとしても、看護師の退職や病床閉鎖という損害との因果関係は立証されていないと判断しています。「カスハラに該当しそうな言動=賠償が認められる」ではなく、違法性と因果関係の立証が壁になります。

慰謝料・損害賠償額と実際に回収できるかの現実

金額の見通しと、回収できるかどうかという現実も押さえておく必要があります。相場の感覚については、次のように理解しておくのが安全です。

カスハラの慰謝料・損害賠償額は、行為の悪質性、継続期間、証拠の有無、実際に生じた損害との因果関係によって大きく変わります。金額だけを目的に訴える場合は、弁護士費用や回収可能性も含めて慎重に検討する必要があります。

たとえば、スーパーの従業員が暴言や土下座要求を受けた事案(東京地裁 平成28年11月10日)では、慰謝料40万円の請求に対して認められたのは10万円でした。暴言など精神的苦痛が中心の場合、慰謝料は少額にとどまる傾向があります。さらに見落としがちなのが、勝訴しても相手に支払能力がなければ実際には回収できないことがある点です。金銭の回収を主目的にする場合は、相手の資力や費用対効果まで見据えて判断することが欠かせません。

カスハラで従業員から逆に訴えられないための社内体制

カスハラを放置すると、今度は被害を受けた従業員から会社が訴えられることがあります。「守る側」の備えも欠かせません。

安全配慮義務違反を避けるために企業が整えるべき対応ルール

加害者を放置し、被害従業員の心身に影響が出ると、会社が安全配慮義務違反(働く人の安全に配慮すべき義務に反すること)を理由に訴えられるリスクがあります。参考になるのがNHKサービスセンター事件(東京高裁 令和4年11月22日)です。コールセンターの職員が、視聴者からのわいせつ発言等に会社が法的措置を取らなかったのは安全配慮義務違反だと訴えましたが、裁判所はこれを認めませんでした。理由として、対応が困難になりそうな入電を常時チェックする体制、わいせつ電話を上司に転送するルールの周知、無料カウンセリングを受けられる体制などが整っていたことが挙げられています。つまり「何を整えていたか」が、責任の有無を分けたわけです。

相談窓口・対応マニュアル・記録ルールを整備し運用に落とし込む

逆に訴えられないための備えは、こちらが訴える側に立つときの備えとも重なります。最低限整えたいのは、次の3点です。

  • 相談窓口>:従業員が一人で抱え込まない受け皿を設ける
  • 対応マニュアル>:場面別の対応とエスカレーション基準を明文化する
  • 記録ルール>:日時・態様・対応内容を残す運用を定着させる

これらは作って終わりではなく、現場の運用に落とし込むことが重要です。なお、カスハラ対策は改正労働施策総合推進法により事業主の雇用管理上の措置義務として位置づけられ、2026年(令和8年)10月1日から施行されます。中小企業を含む全事業主が対象で、企業規模による適用猶予は設けられていません。改正の詳細は厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」をご確認ください。

体制づくりの具体的な進め方は、カスハラ対応マニュアルの作り方、制度の詳細はカスハラ対策の義務化を解説した記事、相談体制づくりはカスハラ相談窓口の整備カスハラ研修のおすすめ・費用相場、方針づくりはカスハラ社内方針の例文もあわせてご覧ください。

カスハラで顧客を訴える場合によくある質問

最後に、検討時によく挙がる疑問へ簡潔にお答えします。いずれも個別事案では判断が分かれるため、最終的には弁護士への相談が確実です。

証拠が録音だけでも訴えることはできる?

可能性はあります。通話録音は客観性の高い有力な証拠になり得ます。ただし、録音だけで結果が決まるわけではなく、いつ・どこで・どのようなやり取りがあったかという経緯の立証も重要です。録音に加えて報告書ややり取りの履歴を残しておくと、立証力が高まります。

録音が裁判でどのように扱われるのか、証拠能力と証明力の違い、信用性を落とさない保存方法については、カスハラ録音の証拠能力と残し方で詳しく解説しています。

会社ではなく従業員個人が訴えることはできる?

できる場合があります。暴言や暴行で精神的苦痛を受けた従業員個人が、加害者に慰謝料を請求して認められた裁判例もあります。会社は業務妨害による損害を、従業員個人は精神的苦痛への慰謝料を、というように、被った損害ごとに請求する主体が分かれる点を押さえておきましょう。

警察に相談・通報すべきケースは?

暴力・脅迫・身の危険・著しい業務妨害など、刑事事件に発展しうる場合は、ためらわず警察への相談・通報を検討すべきです。とくに身体への危険が迫っている場面では、安全の確保が最優先となります。緊急でない相談は警察相談専用電話「#9110」も利用でき、刑事事件としての対応が難しい場合は、弁護士や労働局、自治体窓口への相談に切り替えるのが現実的です。

出入り禁止や利用停止はどこまで認められる?

施設管理権に基づき、適法な範囲で来店や利用を断ることは可能です。ただし、業種の公共性や契約関係、これまでの対応経緯、障害者差別解消法上の合理的配慮などを踏まえる必要があり、一律・恣意的な運用は避けるべきです。出入り禁止や利用停止の判断基準は、現場ごとの個別判断に任せず、社内の対応フローとして明文化しておくことが重要です。具体的なルール化の進め方はカスハラ対応マニュアルの作り方も参考にしてください。

弁護士費用は相手に請求できる?

不法行為に基づく損害賠償では、認容額の一部として弁護士費用相当額が損害に含められることがあります(実務上は損害額の1割程度が目安とされることが多いです)。ただし、かかった費用が全額補填されるとは限らず、金額は事案によって異なります。費用対効果は事前に弁護士と確認しておくとよいでしょう。

まとめ:カスハラは訴える前提と備えを整えて毅然と対応しよう

カスハラは、悪質であれば民事・刑事の両面で責任を追及できる可能性があります。ただし「カスハラに該当すること」と「賠償が認められること」は別であり、違法性・損害・因果関係の立証が鍵になります。訴える前には、やめさせたいのか・賠償させたいのか・処罰を求めるのかという目的を整理し、費用や回収可能性、炎上リスクも見据えて判断しましょう。手段は民事・刑事・訴訟前の対応と幅広く、進める際は弁護士相談・証拠確保・提起という手順が基本です。同時に、相談窓口やマニュアルを整え、従業員から逆に訴えられない体制を築くことも欠かせません。施行日から逆算すると、社内方針の整備担当者教育・研修には一定の準備期間が必要です。備えを固めたうえで毅然と対応し、個別の判断は弁護士にご相談ください。

参考情報・編集部注記

編集部注記
本記事は、厚生労働省・政府広報・裁判所などの公的情報および公開裁判例に基づく解説に加え、カスハラ対策実務ガイド編集部が、判断軸・目的別早見表・記録フォーマットとして企業の実務向けに再整理したものです。裁判例は裁判所名・判決年月日・結論を正確に記載し、「このように判断された事案があります」という形で紹介しています。個別事案の法的判断については、弁護士など専門家にご相談ください。

本記事は、以下の公的情報・裁判例をもとに作成しています。