東京都カスハラ条例とは?対象範囲・罰則と企業対応5ステップ

「自社も東京都カスハラ条例の対象なのか」「罰則がないなら何をすればいいのか」と悩む、人事・総務・法務の担当者や経営者は少なくありません。本記事では、対象範囲・罰則の有無から、企業がとるべき対応5ステップ、活用できる奨励金、国の全国義務化との違いまで、都内企業が実務で動ける形に整理します。カスハラ対策全体の基本から確認したい場合は、カスハラ対策の基本を整理した記事もあわせてご覧ください。

この記事でわかること

  • 東京都カスハラ条例の施行日・対象範囲・罰則の有無
  • 都外本社・都外拠点・コールセンター・SNS対応が対象になり得るケース
  • 条例に罰則がなくても企業が対応すべき理由
  • 都内企業が整えるべき基本方針・相談窓口・マニュアル・研修・被害者ケア
  • 東京都の奨励金と2026年10月の全国義務化との関係

カスハラ対策実務ガイド編集部の結論
編集部では、都内企業がまず整えるべきものは、①基本方針、②相談窓口、③初動対応マニュアル、④管理職の判断基準、⑤被害者ケアの5点だと考えます。東京都カスハラ条例には罰則はありませんが、対象範囲は広く、都外本社・都外コールセンター・SNS・BtoB取引でも問題になり得ます。さらに2026年10月からは全国でカスハラ対策が事業主の措置義務となるため、東京都条例への対応は全国義務化への準備にもつながります。まずは、自社の顧客接点を棚卸しし、方針と相談ルートを明文化するところから始めるのが現実的です。

この記事の編集者

カスハラ対策実務ガイド編集部

カスハラ対策実務ガイド編集部

カスハラ対策実務ガイドは、企業・店舗・現場担当者に向けて、カスタマーハラスメント対策に役立つ実務情報を発信するWebメディアです。編集部では、カスハラの基礎知識、社内体制づくり、従業員を守る対応手順、マニュアル整備のポイントなどを、現場で活用しやすい形でわかりやすくお届けしています。

東京都カスハラ条例とは?まず押さえる基本と全体像

東京都カスハラ条例は、業種を限定しないカスハラ防止条例として全国で初めて成立しました。まずは施行日・罰則・対象者といった全体像を、要点早見表とあわせて押さえていきましょう。

施行日・罰則・対象者を早見表で確認

細かな条文に入る前に、まず条例の全体像を一覧で確認しておきましょう。次の早見表は、本記事で扱う論点の見取り図になります。

項目要点
施行日令和7年(2025年)4月1日
罰則条例自体に罰則なし
対象事業者都内で事業を行う法人・団体・個人(官民・規模を問わない)
対象となる就業者都内で業務に従事する者、事業に関連して都外で業務に従事する者
対象行為顧客等から就業者への著しい迷惑行為で、就業環境を害するもの
企業対応方針策定、相談体制、マニュアル、研修、被害者ケア
国の義務化2026年10月1日からカスハラ対策が事業主の義務に

法令記事では「成立」「公布」「施行」を分けて理解しておくと安心です。条例はすでに令和7年(2025年)4月1日に施行されており、都内で事業を行う企業はすでに適用を受けている状態にあります。成立・公布・施行の具体的な時期は、次項の流れで確認しましょう。

条例が制定された背景と施行までの流れ

カスハラはパワハラに次いで相談の多いハラスメントとされ、従業員の休職・離職や現場の疲弊につながる社会問題として認識が広がってきました。国レベルでは横断的な規制がなく、東京都が議論を重ねて全国初の防止条例として制定した経緯があります。成立から施行までの主な流れは次のとおりです。

時期主な出来事
2023年10月公労使による会議で議論、検討部会が発足
2024年7月条例の基本的な考え方を公表、パブリックコメント開始
2024年10月都議会で可決・成立(4日)、公布(11日・条例第140号)
2024年12月防止に関する指針(ガイドライン)を策定
2025年3月各団体共通マニュアル・事業者マニュアルのひな形を公表
2025年4月条例が施行(1日)

議論の開始から施行まで1年半ほどで整備が進んだことがわかります。指針や共通マニュアルもあわせて公表されているため、企業はこれらを土台に対応を組み立てられます。

条例が定める3つの柱(禁止・責務・指針)

条例の中身は、大きく次の3つの柱で構成されています。名称が「禁止条例」ではなく「防止条例」である点が特徴です。

  • カスハラの禁止>:何人も、あらゆる場において行ってはならないと規定する
  • 基本理念と責務>:都・顧客等・就業者・事業者それぞれの責務を定める
  • 指針と施策・措置>:都が指針を策定し、施策の推進と事業者の措置を求める

行為を禁じるだけでなく、事業者を含む各主体に防止のための取組を求めている点が、この条例の眼目だといえます。

カスハラと正当なクレームを分ける3つの要素

読者が最も迷うのが、正当なクレームとカスハラの線引きです。条例上のカスハラは、次の3つの要素を「すべて」満たすものと定義されています。

  • 主体>:顧客等から就業者に対して行われること
  • 行為>:業務に関する著しい迷惑行為(違法な行為または不当な行為)であること
  • 結果>:就業環境を害するものであること

商品・サービスの改善につながる正当な苦情や要望は、ここでいうカスハラには当たりません。実際の判断は、要求の目的・経緯・手段の相当性などを総合的に考慮する必要があり、画一的な線引きが難しい領域だからこそ、社内で判断基準を持つことが重要になります。正当なクレームとカスハラの違いをより詳しく確認したい場合は、カスハラ対策とは?正当なクレームとの違いで詳しく整理しています。

東京都カスハラ条例の対象範囲と関係者の定義

東京都カスハラ条例の対象範囲と関係者の定義

自社が条例の対象になるかを判断するには、「事業者」「就業者」「顧客等」という3つの登場人物の定義を正確に押さえる必要があります。ここでは関係者ごとの定義と、判断に迷いやすいケースを整理します。

「事業者」「就業者」「顧客等」はそれぞれ誰を指すのか

条例は、関係する3者をそれぞれ次のように定義しています。いずれも都民か否かや事業規模を問わず、幅広く対象としているのが特徴です。

  • 事業者>:都内で事業(非営利を含む)を行う法人・団体・個人。官民・規模を問わない
  • 就業者>:都内で業務に従事する者。正社員・派遣・アルバイト・フリーランス・インターン等も含む
  • 顧客等>:顧客に加え、株主・保護者・配達先住民など業務に密接に関係する者も含む

「顧客等」には、現に取引のある相手だけでなく、今後サービスを受けることが予期される人や、業務上対応が必要になる第三者まで含まれる点に注意が必要です。

都外本社・都外拠点・コールセンターも対象になり得るのか

「本社が都外だから関係ない」という理解は誤りになり得ます。判断の鍵は、本社の所在地ではなく、都内に事業の実態があるか、就業者の業務が都内事業に合理的に関連しているかという点です。次の判定表で、自社の状況を当てはめてみてください。

想定ケース対象になるか
都外本社・都内に支店あり対象になり得る
都内本社・都外コールセンターから都内事業者へ対応対象になり得る
都内勤務をネット上で明示している就業者へのSNS投稿対象になり得る
BtoB取引先からの過度な要求・暴言対象になり得る

たとえば、都外のコールセンターで働く担当者でも、都内の事業者への問い合わせに電話で対応していれば、その事業に不可欠な業務に従事する「就業者」になり得ると整理されています。拠点の住所だけで対象外と判断しないことが大切です。

電話・メール・SNS・取引先からの行為も対象に含まれる

条例は「あらゆる場において」の行為を禁止しており、対面に限られません。電話・メール・SNSといった非対面の手段による行為も、就業環境を害するものであれば対象になり得ます。インターネット上で都内勤務を明示している就業者への中傷などが典型例です。

また、対象は一般消費者からの行為に限りません。取引先など事業者間(BtoB)の関係で行われる、正当な理由のない過度な要求や暴言も、条件を満たせばカスハラに該当し得ます。立場の弱い取引先に無理な要求をしないよう、自社が「行う側」にならない配慮も同時に求められます。業種別に対応を落とし込みたい場合は、飲食店のカスハラ対策介護施設のカスハラ対応も参考になります。

東京都カスハラ条例に罰則はある?違反時のリスクを整理

「罰則がないなら対応しなくてよい」と考えるのは危険です。条例に罰則がない理由と、それでも放置できない法的・実務的なリスクを整理します。

条例自体に罰則が設けられていない理由

東京都カスハラ条例には、違反者を直接処罰する罰則規定は設けられていません。これは、カスハラ対策を罰則で強制するのではなく、禁止の明示と各主体の責務、指針による具体化を通じて社会全体の意識を高め、防止を図るという「防止条例」の設計によるものです。罰則で範囲を区切ると「これ以外はカスハラにならない」という誤解を招きかねない、といった点も背景にあると考えられます。したがって、罰則がないことは「企業が対策しなくてよい」ことを意味するものではありません。

刑法・民法上の責任に発展するケース

条例に罰則がないことは、行為が法的に無責任であることを意味しません。カスハラの態様によっては、暴行・傷害・脅迫・強要・名誉毀損・侮辱・威力業務妨害・不退去などとして、刑法や特別刑法による処罰の対象になり得ます。

企業側にも民事上のリスクがあります。被害を受けた従業員への対応を怠れば、労働契約法5条が定める安全配慮義務の違反として、損害賠償責任を問われる可能性があります。条例上の措置を講じていたかどうかは、こうした責任判断の材料として参照されることも想定されます。

罰則がなくても放置できない実質的リスク

法的責任に加え、放置による実務上のダメージも見過ごせません。具体的には、対応の不備がSNSで拡散して評判が低下したり、現場が萎縮して士気が下がったり、対策の進んだ他社へ人材が流出したりといったリスクです。

条例上も、事業者は就業者がカスハラを受けた場合、速やかな安全確保や行為者への中止申入れなど、必要かつ適切な措置を講ずるよう努めることが求められています。さらに2026年10月からは国による措置義務が始まるため、「罰則がないから後回し」という姿勢はますます取りにくくなります。

東京都カスハラ条例で企業がとるべき対応5ステップ

条例が事業者に求めるのは、具体的な防止体制の整備です。ここでは厚労省マニュアルや東京都の指針を踏まえ、企業が取り組むべき対応を5つのステップに整理します。2026年10月から始まる全国義務化で企業が整えるべき措置は、カスハラ対策義務化で企業がやるべき5つの措置でも詳しく解説しています。

各ステップは「何を作れば完了か」という成果物まで意識すると実装しやすくなります。まず全体像を次の表で確認しましょう。

ステップ成果物の例
①基本方針カスハラ対策基本方針、社外掲示文、社内周知文
②相談体制相談窓口、報告フロー、判断責任者の明確化
③マニュアル初動対応フロー、記録票、エスカレーション基準、想定問答集
④研修一般従業員向け研修、経営層・管理職向け研修、ロールプレイ
⑤被害者ケア休憩・交代ルール、プライバシー保護、メンタルケア、再発防止会議

①カスハラ対策の基本方針を策定し社内外へ周知する

最初に、「カスハラには毅然と対応し、従業員を守る」という会社としての基本方針を明文化します。方針は社内に周知するだけでなく、店頭の掲示やウェブサイトなどで社外にも示すことで、顧客等への予防的なメッセージになります。成果物としては、基本方針そのものに加え、社外向けの掲示文と社内向けの周知文がそろっている状態が一つの完了の目安です。方針文書をこれから作成する場合は、カスハラ社内方針の例文テンプレートを参考にすると、社内周知用・Web掲載用の文面を作りやすくなります。

②相談窓口と社内連携の体制を整備する

次に、カスハラを受けた就業者が相談できる窓口をあらかじめ決め、広く周知します。あわせて、現場から本社・本部への報告フローや、最終的に誰が対応を判断するのかという責任者を明確にしておくことが重要です。一人で抱え込ませない仕組みをつくることが、被害の長期化を防ぐ第一歩になります。

③対応マニュアルと想定問答集を準備する

窓口を整えたら、現場が迷わず動けるよう、初動対応フロー・記録票・エスカレーション基準を含む対応マニュアルを準備します。特に「ネットにさらすぞ」といった脅し文句への返し方など、具体的な場面を想定した問答集を用意しておくと現場の負担が大きく減ります。東京都が公表する各団体共通マニュアルや事業者マニュアルのひな形は、自社の状況に合わせて修正して使う位置づけです。マニュアルに盛り込む項目や記録シート、エスカレーション基準を具体化したい場合は、カスハラ対応マニュアルの作り方もあわせて確認してください。

④従業員と管理職への研修を継続的に実施する

マニュアルは作って終わりではなく、研修を通じて現場に定着させる必要があります。一般従業員向けには定義や該当行為例、正当なクレームとの違い、記録の取り方などを、経営層・管理職向けには判断や引き継ぎのポイントを扱うとよいでしょう。ロールプレイを取り入れ、一度きりでなく継続的に実施することが効果を高めます。外部研修の選び方や費用感を知りたい場合は、カスハラ研修の選び方・費用相場で比較ポイントを整理しています。

⑤被害を受けた就業者をケアし再発を防ぐ

最後に、被害を受けた従業員へのケアと再発防止です。対応の交代や休憩のルール、相談者のプライバシー保護、メンタル・身体面のケアを整え、相談したことで不利益を受けない旨も明確にします。発生事案を振り返る再発防止の場を設けることで、組織としての対応力が積み上がっていきます。最後に、自社の状況を次のチェックリストで確認してみてください。

  • 方針>:カスハラ対策の基本方針を策定し社内外へ周知しているか
  • 窓口>:相談窓口と報告フローを設けているか
  • 記録>:録音・記録の運用ルールを定めているか
  • 基準>:管理職の判断・エスカレーション基準があるか
  • ケア>:被害者のケアと再発防止の仕組みがあるか

東京都カスハラ条例への対応で活用できる支援制度・奨励金

条例対応には費用も手間もかかりますが、東京都は中小企業向けの支援制度を用意しています。ここでは企業向け奨励金を中心に、対象・要件・申請時の注意点を解説します。

都内中小企業向けの企業向け奨励金とは

代表的な支援が、公益財団法人東京しごと財団が実施する「カスタマーハラスメント防止対策推進事業 企業向け奨励金」です。要件を満たした事業者に定額40万円が支給されます。実費精算ではなく定額支給のため、条件を満たせば一律で受け取れるのが特徴です。

対象は、常時雇用する従業員が300人以下の都内中小企業等・個人事業主で、都内に本店登記または支店の事業所があることが前提です。条例が求める事業者の措置を後押しする趣旨の制度であるため、自社が中小企業に当たるかをまず確認しましょう。

対象となる取組はマニュアル整備と実践的な対策

支給を受けるには、マニュアルを作るだけでは足りません。次の2つを満たす必要があります。

  • マニュアルと方針>:カスハラ対策マニュアルの作成・改定と、条例に言及した基本方針の社内外周知
  • 実践的な取組>:録音・録画環境の整備/AIを活用したシステム等の導入/外部人材の活用のいずれか1つ以上

実践的な取組は、電話応対が中心なら録音やAI通話分析、店舗接客が中心なら録画や外部研修というように、自社の業務実態に合わせて選ぶと準備を進めやすくなります。

申請前に確認すべき注意点

申請手続きには独自のルールがあり、事前準備が欠かせません。主なポイントを表で整理します。

確認項目内容
申請システム電子申請「Jグランツ」(来所・郵送は不可)
事前準備GビズIDプライムの取得が必要(発行に時間を要する)
募集方式令和8年度は事前エントリー制(超過時は抽選)
第1回エントリー令和8年6月25日〜7月9日(最新要項を要確認)

奨励金は募集回ごとに受付期間・要件・提出書類が変わる可能性があります。本記事の情報だけで判断せず、申請前には必ず特設サイトと東京しごと財団の最新募集要項を確認してください。なお「事前に○万円を払えば都の奨励金が受けられる」とうたう、都を装った勧誘業者の情報も寄せられています。都がこうした業者に勧誘を委託することはなく、一切関係がありません。あわせて、業界団体向けには別途「団体連携によるカスタマーハラスメント防止条例普及促進事業補助金」も用意されています。

研修費用の相場や奨励金の使い方は、カスハラ研修の選び方・費用相場でも解説しています。

東京都カスハラ条例と国のカスハラ義務化はどう違う?

東京都の条例とよく混同されるのが、国によるカスハラ対策の義務化です。両者の違いを整理し、いま条例対応を進める実務的な意味を確認します。

2026年10月施行の改正労働施策総合推進法との関係

2025年6月に労働施策総合推進法が改正され(令和7年法律第63号)、カスハラ対策が事業主の雇用管理上の措置義務となりました。施行日は2026年10月1日で、労働者を1人でも雇用するすべての事業主が対象であり、企業規模による猶予はありません。厚生労働省は2026年2月26日に対応指針(令和8年厚生労働省告示第51号)を告示しています。条例と国の義務化の違いは、次の表のとおりです。

観点東京都カスハラ条例国の義務化(改正労働施策総合推進法)
対象都内で事業を行う事業者全国の全事業主(労働者1人でも)
施行令和7年4月1日令和8年10月1日
性質禁止・責務/努力義務が中心雇用管理上の措置義務
違反時罰則なし(民事・刑事責任はあり得る)報告徴求・指導・勧告・公表の対象

国の義務化にも直接の刑事罰はありませんが、勧告に従わない場合の企業名公表という仕組みがあり、行政対応・民事リスクの両面で放置しにくい点は条例と共通します。義務化の背景や全体像は、政府広報オンラインでも平易に解説されています。

条例対応を全国義務化への助走と捉える実務的メリット

東京都条例は、厚労省が示してきたカスタマーハラスメント対策企業マニュアルの内容を概ね踏襲しており、国の指針も他のハラスメント指針と大きく異なるものではないと整理されています。いま東京都条例に沿って方針策定・相談体制・マニュアル・研修を進めておけば、多くの取組は2026年10月の全国義務化への準備にもつながります。もっとも、最終的には厚生労働省の指針や自社の雇用管理体制に照らして、不足がないかを確認することが重要です。条例対応と義務化対応をできる限り一体で進めることで、二度手間を抑えやすくなる点に実務的なメリットがあります。

東京都カスハラ条例に関するよくある質問

最後に、東京都カスハラ条例について特に問い合わせの多い疑問を、要点に絞って整理します。詳細は本文の各セクションもあわせて参照してください。

東京都カスハラ条例はいつから施行されていますか?

令和7年(2025年)4月1日から施行されています。2024年10月4日に成立し、令和6年10月11日に公布されたうえで、効力を持つ施行日が令和7年4月1日です。都内で事業を行う企業はすでに適用を受けています。

東京都カスハラ条例に罰則はありますか?

条例自体に罰則はありません。ただし、行為の態様によっては刑法等で処罰され得るほか、企業が対応を怠れば安全配慮義務違反として民事上の責任を問われる可能性があります。罰則がないことと、対応が不要であることは別問題です。なお国の義務化についてはカスハラ対策義務化で企業がやるべき5つの措置で解説しています。

都外に本社がある企業でも対象になりますか?

対象になり得ます。本社の所在地ではなく、都内に支店等の事業所があるか、業務が都内事業に合理的に関連しているかで判断されます。都外のコールセンターから都内事業者への対応を行う場合なども対象になり得ます。

取引先からの暴言や過度な要求も対象になりますか?

対象になり得ます。条例の「顧客等」は一般消費者に限られず、取引先など事業者間(BtoB)の関係も含みます。正当な理由のない過度な要求や暴言は、条件を満たせばカスハラに該当します。あわせて、自社が立場の弱い取引先に無理な要求をしないよう、「行う側」にならない配慮も求められます。判断の基準はカスハラ対策とは?正当なクレームとの違いもあわせてご確認ください。

SNSでの投稿や口コミもカスハラに当たりますか?

当たり得ます。条例は「あらゆる場」での行為を対象としており、対面に限りません。インターネット上で都内勤務を明示している就業者への中傷など、SNSや口コミでの言動も、就業環境を害するものであれば対象になり得ます。

まとめ:東京都カスハラ条例は罰則なしでも企業対応を早めに進めよう

東京都カスハラ条例は、業種を限定しない全国初の防止条例です。条例自体に罰則はないものの、対象範囲は都外本社や非対面・BtoBにまで広く及び、放置すれば刑事・民事のリスクや評判の低下を招きます。企業に求められるのは、基本方針・相談体制・マニュアル・研修・被害者ケアという対応5ステップの整備です。都内中小企業は定額40万円の企業向け奨励金も活用できます。まずは基本方針と相談窓口の整備から着手し、奨励金は最新の募集要項を確認のうえ検討しましょう。2026年10月の全国義務化への助走としても、早めの対応が安心につながります。次に取り組む内容が決まっている場合は、カスハラ社内方針の例文テンプレートカスハラ対応マニュアルの作り方カスハラ研修の選び方・費用相場もあわせて確認してください。判断に迷う場合は専門家への相談も選択肢になります。

参考情報・編集部注記

編集部注記
本記事では、東京都・厚生労働省等の公的情報に基づく解説に加え、カスハラ対策実務ガイド編集部が都内企業の実務向けに、早見表・対象判定・対応5ステップ・チェックリストとして再整理しています。個別事案の法的判断については、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。なお、奨励金は募集回ごとに受付期間・要件・提出書類が変わる可能性があるため、申請前には必ず特設サイトと東京しごと財団の最新募集要項をご確認ください。

本記事は、以下の公的情報をもとに作成しています。